幸福の木

Chumi2004-07-10


むかーし、実家にハワイアンボーイズがホームステイに来たことが有る。そのときに彼らは、「幸福の木」と呼ばれる観葉植物のちいさな幹の切れ端3つをお土産に持って来た。父は植木が大好きだったので、彼らが帰国した後それらを大切にそだてた。木はぐんぐんと大きくなり、父の背を超した。放射状に見事に広がった緑の葉は、とても美しく爽やかな印象であった。
ちょうどその大きく育った木が父の会社の事務所の入り口に置いてあったので、たまたまそれを見かけた私が「いいね、これ。」というと。父は「大きくなって邪魔でしかない。どんどん上に伸びるんや。もてあましているので欲しかったら持っていき。」
お部屋に観葉植物が欲しかった私は、その葉の美しさと木の名前が気に入り、もらうことにした。思い出のしなものなので、無精な私も丁寧に世話をした。
木はそれからも上へ上へとぐんぐん大きくなった。葉は横に複数分岐せず、だただた上に一連の葉が放射状に伸びるだけである。
あれからもう何年たっだだろうか。ちかごろ忙しくて放りっぱなしにしてきたその幸福の木は、かろうじてようやく生きているだけの姿になっていた。手入れが行き届かず葉もしわしわでいつ枯れてもおかしくないみっともない姿になった。それでも木はまだまだ上をめざしでどんどん葉を落としては新しく広げて行った。
その葉も以前に比べ勢いがなく小さい葉ばかりになった。
ただ、根は立派になり、いままでいくつも子供が脇から生えて来て、その都度植え替えた。
親の木があまりにもみすぼらしいので、私はついに決意をして、親の幹を切ることにした。「幸福の木」と言う名前がわたしにプレッシャーを与えていた。幸福を切ってもいいんだろうか?これで、この木が死んじゃったらなにか悪いことがおこらないだろうかといままで不安で実行出来なかったのだ。でもこの日、ついに幹を手でちぎった。幹は手でちぎれるほど乾燥していた。
そして、ほぼ根っこだけになった幸福の木に新しい土を追加して、水をやり続けた。このまま捨てたのではあまりにも木がかわいそうだったから。
それから数日たった今 幸福の木はみごとに蘇り新しい小さな葉をドンドン出して来た。すごい生命力だ。
古いものを捨てると新しいものがこんなに勢いよく沢山でてくるなんて!
木は私を励ましてくれた。
私の毎日の生活に勇気を与えてくれた幸福の木 ありがとう。