思春期はサナギ


「思春期の子供の心を考えよう」という講演会に行ってきた。講師は 京都大学助教授であり、ユング臨床心理士の皆藤先生だ。

「思春期の子供のこころなんて わからないですよ」と”らしからぬ”ことをおっしゃる言葉に あれ?どこかでこれ聞いたことがあるとおもっていたら、先生の恩師は河合隼雄先生だとおっしゃる。ああーん。なるほど。先日読んだ本で河合先生がこう書いていた。
「人の心なんて、そない簡単にわかるってたまるか」
 面白い臨床心理学者だ。

科学者にあこがれ工学部に入学したが、科学で解明できることの少なさに愕然とし、向上心を失い、卒業が危ぶまれ、早く卒業できる学部へとの目的で、教育学部に移られたとき河合先生との出会いがあった。
臨床の「床」とは、「死の床」を意味し、その患者の”魂”のお供をするのが臨床心理学だと説かれる河合教授の心理学概論でカルチャーショックをうけたそうだ。皆藤先生は科学者を目指していてから、「魂」などという訳の分からない目に見えないものなど 小学生のときに”ありえない”と抑圧排除してしまっていたからだ。それを 大学という教育最上機関で研究しているとは! と。
さらに当時家庭教師のバイト先家庭で ある日子供が電話コードで母親の首を絞める現場に遭遇し、その対処をしなければならなかったらしい。この話には、ギョットした。普段はおとなしいフツーの子供だったそうだ。

なにか世間の常識では計りきれない事件が起こると、どこからともなく教育評論家のような人がしたり顔で「あの事件がおこった心理はこうですよ」とさもわかったように問題を起こした子供や家庭の解説するが、はっきりもの云う人ほど眉唾物らしい。

カウンセリングの事例や、ご自分の経験談など いろいろなお話が展開されるなか、いくつか印象深い言葉が残った。

「思春期はサナギであると河合先生は仰る。親とろくに会話もせず、何を考えてるかわからない思春期の子供たち。子供が話さなければ、親は子供の心が知りたくて、どんどん不安になる。でもそのころの子供たちは、自分の中でなにがおこっているのか なんでこんな態度を取ってしまうのか自分自身でわからないそうだ。自分でわからないことを人には説明できない。みかけは何の変化もないようにみえるが、実は本人内部で劇的な変化がおこっているのだ。親はそのサナギをただ暖かく”見守り”成虫となってでてくるのを”待つ”しかない」というのだ。
ただし、「サナギの子供におかしな兆候があった場合、親はそれに即対応しなければならない。」
「子供たちが 思春期になるころ親はちょうど思秋期にさしかかる。夫婦の危機を子供が”不登校”として身を以て警告としてしめすとも云われている。が、そのような時代もそろそろ終わりを告げようとしている。もう子供はさめてきている、”私は私、親は親 勝手にすれば”と子供が親を捨てる時代がこようとしている。どうか皆さん 子供に捨てられないように」
「へたにマニュアルを読んだり 本を読んだりして 子供を理解しようとしないでください。まずは自分の子供をまっすぐよく見てください。答えはそこにあるのですから。」