嬉遊曲、鳴り止まず−斎藤秀雄の生涯

M夫人が親友のデビュー作だと貸してくださった1冊。緻密に書かれた文章ゆえ、なかなか読み進めなかったが、つい先ほど読み終えたばかり。
終盤、涙がにじんでたびたび字が読めなかった。桐朋学園の名前は、ぼんやりと知ってはいたものの、日本にこれほど情熱的に音楽とその教育に身をささげた人がいることを知らなかった。
「遠い昔の人を書くわけじゃなく、まだ記憶に新しい人のことを書くわけだから、けっして嘘は書けないのよ」とおっしゃっていたという著者の言葉は、斎藤秀雄の生涯を綿密に再現しているこの作品によって証明されているように感じる。

嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯

嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯

3年余りにわたり、国外国内を問わず130人から引き出した取材と膨大な本の資料から生み出されたこの作品には、宮沢賢治セロ弾きのゴーシュの楽長のモデルが斎藤秀雄であったのではないかとう非常に興味深い仮説もあり、日本の戦前戦後という歴史的背景とともに斎藤秀雄の父の時代から、彼の音楽への道を辿られる。

現在、国際的に活躍されている斎藤秀雄門下生ソリストたちの演奏会や、毎年松本で開催されるサイトウ・キネン・フェスティバルへ是非とも足を運んでみたくなった。

それから、今度東京に行ったら、斎藤邸がある(あった?)付近の千鳥ヶ淵公園に行ってみようと思う。