幽霊人命救助隊

kenkoおススメの書。
GWにゆっくり読もうと「納棺夫日記」とともに取り寄せたが、「どんなんかな〜?」とチラ読みすると、アラ大変!
止まんなくなっちゃったよ!
「天国に行けない霊たちがこの世に降りて、自殺志願者の命を救って救って救いまくる。涙と笑いの波状攻撃、ここに炸裂!」と帯に書かれてありますが、その通りです。

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

読み進めていくと、著者が精神分析、心理学について学び、抑鬱鬱病境界性人格障害について、綿密に取材しているんだろうなぁと感じてくる。自殺志願者の症状と精神分析がリアルだからだ。(最後のページに到達したとき、次のページに参考文献として専門書が連ねてあるのを発見して。やっぱり、なるほどと思った。)
しかし、それを明かして(説明して)いるのは、救命者にのりうつって体内から心情をモニターしている霊、という設定が面白い。
扱っているテーマは重いのだが、この4人の霊が役割分担をして、ある者は、本人に入り込み心情をモニターし、それをヘッドセットで外にいる霊に伝え、外に居る霊はある方法をつかって、志願者を自殺からおもいとどませる。このやりとりが実にユニークで笑える。
年代の相違する4人の霊たちは、神様と契約し49日の間に100人の自殺志願者を救命しなければ天国に行けない。そして、最後に待ち受けているのは・・・・!
家庭、会社、夫婦、経済、教育と現代の社会問題があぶり出されていて、非常に考えさせられる。
「自殺したい」と思ったことは一度もないが、「このまま生きていて今後楽しいことがあるんだろうか」とドツボにハマっていた時があったので、自分にも思い当たる節があり、ズシンと響いた。あぁ、やっぱりそうなんだ。これでいいんだ。とも思い返した。
kenko薦めてくれてありがとう!楽しく読ませてもらいました。
ちょっと抑鬱症状、あるいは、責任感があり真面目で自分自身にいきづまってしんどい軽症の人、或は周囲にそういった人がいる方にもおススメかも。何ともない人は、「あー面白かった」か「ふーん」で終わるだろうが、氣持ちが分る人は、読了後ちょっと自分に変化があるかもね。
養老孟司東大名誉教授の解説も実に面白かった。気に入った部分を引用させていただく。

あなたが死んだことを確認できるのは、あなたではない。あなたが確認できるのは、自分が生きていることだけである。あなたの死で最大の影響を受けるのは、あなたではない。家族であり、友人である。それなら自己の死とはなにか。それを考えてしまうのは、西洋近代的自己という、錯覚のためである。仏教でははじめから無我というではないか。


それにしても、「魂は千の風になりますか?」を読んでから、ここのところ、「おくりびと」「納棺夫日記」「幽霊人命救助隊」と根底に流れるものに統一性があるように思う。特に意識して選んでいるつもりはないんだけどな。


こんな小説を読んでいる折り、昨夕は、清水由貴子さん自殺のニュースが入ってきて驚いた!人命救助隊の面々が本当に居て、彼女にアドバイスしていたら、彼女は一命をとりとめただろうか?なんて、考えてしまった。この本で、障害児の幼児を抱えた母親が育児疲れで親子心中しようとした事例に一番胸がしめつけられた。自分自身の悩みも辛いが、介護も自分をうしなってしまう辛さが有ると思う。

今朝、銀行のロビーのスポーツ紙が清水さんの自殺を1面で報じていた。過去に赤貧たる家庭環境があったなんて、あの明るい笑顔からは意外だった。母親の看病苦かと自殺の原因が書かれてあり、小西博之氏が怒って「バカやロー!あんなに真面目な子が自殺するなんて」とのコメントが載っていたが、真面目だからこそしんどくなるんじゃないか。それをこの本で私は嫌というほど知った。不真面目な(このように書くと語弊があるよね)、もとい、真面目すぎない人が生きやすい世の中なんだなとつくづく思う。