蛹令嬢の肖像

ドラちゃんが貸してくれた本の一冊

蛹令嬢の肖像 (集英社文庫)

蛹令嬢の肖像 (集英社文庫)

著者ヘザー・テレルは、ボストンカレッジで美術史を学び、ボストン大卒の現役弁護士。プロフィールの写真を見るかぎり美人だ。
本書は、彼女の友人が投げかけた質問「依頼人が主張する立場に確固とした法的根拠があっても、倫理的見地から依頼人の弁護を断ることはありえるか」が著作の発端となっている。
数奇な運命をたどる「蛹令嬢の肖像」を巡り、美術品の所有権争いにおける倫理の問題がミステリー調に展開される。
表紙の絵をみて、真っ先に思い浮かんだのはフェルメールだった。
だが、「蛹令嬢の肖像」もその画家もフィクションだ。フィクションでありながら、13世紀オランダ、20世紀ドイツ、現代ニューヨークと3つの時代を巡回しながら、美術品が持つ歴史上の謎を解き明かされる様子は、リアリティに満ちている。
中盤からやたら面白くなってきて、ぐいぐい読んだ。ホロコーストの犠牲者に対してナチスがやった非人道的なこと、中世オランダでのカトリックカルヴァン派の争い、そして、現代での法曹界での闘いが、サスペンス的に描かれている。訳本だし、やや読みづらかったけど。
法と倫理との狭間でどこまで人道的に裁くのか、裁判官に訴える弁護士の論理的熱弁手腕も見所である。
ひさびさ、面白かった。