スティルライフ
光の指でふれよ で食いついてしまった私が次に手を伸ばした池澤作品。
芥川賞受賞とか、僕のバイブルでなんども読んでますとか、そういったコメントで読んでみたくなった。
- 作者: 池澤夏樹
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/12/10
- メディア: 文庫
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読了後直後の所感は「へ?」だった。
もぅ、いやになっちゃう。自分の感受性くらい自分で守れよ!と今度は茨木のり子の詩のフレーズが脳裏を彷徨う。
判らなかったのだ。何がいいのか?
兎に角、わたしにとっては非常に薄気味悪く、薄気味悪いままで終わったというか、勢いよく弾まされたボールが空高く投げ出されたまま終わっちゃった印象だった。
ところがだ。
この読了感、どこかで味わったことあるよな?と数日後思い出してきた。そうあの青春の日々沢山読んだ叙情的漫画。
あのなんとも言えない、昇華できずに彷徨ったままの感情だ。
一番印象に残ったのは、冒頭に書かれていた3行ほど。たぶん、これをこの小説全体が物語っているんだろう。
自分の中に広がる世界と自分の周りの世界の境目の調和。
若い頃は、誰もが経験することだ、そうとは意識せず経験していることが多いだろう。意識した者はきっとそれなりに悩んだはず。
本書には、表題のスティルライフの他に「ヤーチャイカ」というタイトルの作品が収録されているが、私はそちらの方が印象的だった。
ひょんなことがら生まれる中年男子の友情と二人が背負っている社会的立場。信頼と友情ってなに?を考えさせられる。東北道を走る描写が、私にはとてもリアルで、そしてあの霧のストーリーがとてもドラマチックだったな。
ただ、あの女子高校生が語る部分はちょっと年齢の割に幼稚に思えた。実際の女子高生はもっと大人びてるよ。作者の言わんとすることはわかったつもりなんだけど。ちょっとかったるかったな。
後日 また旦那に語る予定w