僕はパパを殺すことに決めた

義母が読みたい本が近所の本屋で発売日に完売になっていたので、大阪まででかけるついでに紀伊国屋でその本を探すことにした。前日、サンデー毎日でも紹介されていたこの本のタイトルを発見し、その内容を知って、私は愕然とした。
あの事件が本となって出版されていたのに驚いた。そりゃ、義母が読みたがるはずだ。私だって読みたい。真実が知りたい。著者が、元少年鑑別所法務教官であることや少年事件を探求しているジャーナリストであること、内容が普段見ることのできない供述調書3000枚に基づいて構成されていることから、でたらめの興味本位の内容じゃないという印象があった。

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

書店の家庭教育のコーナーで平積みされている本に手を伸ばしたとき、カバーに炎焼した家屋の写真がありドキリとした、見返しを開いて「見てはいけない物を見てしまった」ような気持ちになってすぐ本を閉じた。そこには、少年の自筆殺人計画カレンダーが刷られていたのだ。
「ちょっと待ってよ。見返しに刷るか!」と思わずつぶやいてしまった。
ここまで、しなくてもいいのじゃないのか! これでは、少年の更生に差し障るのではないのか! という思いが頭をもたげたが、一体どういった経過をたどって事件が起こってしまったのかというのは、今は報道もされなくなっていたので、ガセでなく、しっかりした情報が知りたい好奇心に負け、再び本を開き、読み進めた。現実は小説よりも奇なりといわれるが、まさに少年がおかれた環境は、そう感じる家庭環境だった。
結局、この日のうちに読了。あまりにも不憫であるという少年に対する気持ちは読後も変わりない。事件は、負の連鎖、因果応報による悲劇に感じる。しかし、教育熱心な家庭にはどこでも潜んでいるような一面も垣間みられ、自分はどうであったか、これからは、どうあろうと思うかを思い返した。最後に救われたのは、亡くなられた母親の実家の祖父母が非常に懐のおおきくて暖かい人間性豊かな方たちであるということがわかったことだ。あのおじいちゃん、おばあちゃんがいらっしゃる限り、少年は更正できるだろうと感じた。

本の内容が衝撃的だったので、友達にメールをすると、出版と同時にTVで話題にとりあげられて賛否両論の問題になっていることを知った。悲しいな。私にとっては、一生忘れられない悲しい事件だ。
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その後 この本を読んだ旦那とも話し合った。読了後「何とも言い難い気分になる」のは同感。ある意味、この本が世に出ることによって、読んだ人の魂を磨くことなるんじゃないかという旦那の意見に深く頷いた。