国語入試問題必勝法 清水義範 1987年

昨日、夕飯のしたくを焦ってしていると、うっちゃりがやってきて、複数のプリントを渡した。普段学校の連絡事項のプリントは私の机に置くように言ってあるのに、わざわざ持ってくるなんて・・そんなに重要なものなのか。「何?」と尋ねると「これ読んでみて」
B5のわら半紙に11pほどびっしり並んだ活字の先頭には、「国語入試問題必勝法」とタイトルが打たれていた。「何これ?国語の問題? お母さんにしてみろって? 」「ううん。読み物。今日先生から貰った。いいから初めから読んでみて。」
とにかく、お腹が減って文字が入らないのと、ごはんのしたくでそれどころではない。子どもってどうして、親が忙しくしているときに限って申し立てをしてくるんだろう?「今、文字が入らないから、ごはんの後でゆっくり読ませて。」
やっと、落ち着いて、プリントに目をやると、これは、問題ではなく、小説のようだ。読み進める内にパロディであることがわかった。これは、おもろい!なんと言うユーモアだ。
家庭教師が国語の苦手な受験生を独自の必勝法で指導し、グングンと国語力をつけて、成績を上げる話しだが、本文の内容が、国語の問題文まるまると先生と生徒のこれを解く方法の指導のやりとりで構成されている。だから、読みながらこちらもその問題を考えざるを得ない。
それに、この必勝法は、まんざらでたらめではない と思った。そのいくつかの手法のうち、長文読解で本文を一切読まずにまず設問を読み、それからその箇所を本文から探すというのは、かつて私も使っていた手だ。ちなみに国語はそれほど得意科目ではないんだけれど。

  • これ、面白いな〜〜!  とうっちゃりに話しかけると 
  • 先生が、これが出たとき、国語の入試問題をつくっている人たちが騒然となった ってゆうたはった。

そして、最後のしめくくりの生徒(主人公)からの家庭教師への手紙が、一番笑える。かなり笑える。この面白さは、初めからこの小説をよんで、ここの文章にたどいついて最高潮をむかえるのだ。
そして、この面白さを伝えたくて、誰かに ねぇねぇ ちょっとこれ、読んでみてよ〜!といいたい衝動に駆られる。うん、わかった。うっちゃりは、そうだったんだね。


うっちゃりは、代数や物理化学は好きなようだが、国語が苦手だ。喋るのも苦手で、表現力が乏しいのが心配だ。なぜなら、人間関係において、言葉足らずというのは、誤解されやすいからだ。
もちろん試験では、なかなか平均点が取れない。普段から読書しないので、まず文章を読み取るのに慣れていないのだと思う。国語力のある子は、確かに国語のセンスがあると思うけど、いくらか読み込む努力をすれば、少しは力もつくはずだ。国語を侮ってはいけない。理数系でももちろん英語でも、大学入試となれば、問題自体を理解するのに国語力がいるからだ。

  • で、どうだった?これ読んで、どう思った? と尋ねても
  • フツー という答えが返ってきた。
  • あのねー。「フツー」という感想は、ありえないわけ。おもしろかったとか、おもしろくなかったとか、興味無しとか、なんともおもわなかったとか。理解できなかったとか、そういう風に行って欲しいなぁ。

兎に角、只今反抗期まっただ中なので、なかなかまともな会話が取れない。まぁいいか。まだまだ先は、長い。ゆっくり行こう。何が自分が感じるところがあったからこそ、わたしにこのプリントを紹介してくれたんだろうしね。楽しみを分かち合いたいと。ありがとうね。

それにこのような生徒の興味を惹く楽しい副教材を与えてくださった国語の先生には、ほんとうに感謝です。いい先生に巡り会えて良かった。


国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

レビューを読んでいると、これは、短編集で、その中で進行性の認知症を本人の目線で書いてあるのが新鮮で面白いという評があったので、ウィッシュリストに入れました。
清水氏のキーワードをたどると、おおなんと、この作品で第9回吉川英治文学新人賞を受賞されているではないか。